スタッフレビュー

星亀椅子工房の職人紹介

「あぐらいす」の開発エピソード

以前、ある業者の方から、「お寺で使える底座のスツールを提案してほしい」というご要望をいただいたのですが、これが、あぐらいすが誕生するきっかけになりました。この案件では、価格面などで折り合いが付かず、具体的な提案までは至らなかったのですが、アイデアを出していくなかで、「底座だけの機能でも、おしゃれな椅子ができるじゃないか!」ということに気付いたんです。その後、試作を重ね、「あぐらいす」として今の形になったというわけです。

「あぐらいす」の好きなところ

まず、座面が大きくゆったり座れることです。開発当初は、もう少し小さいサイズでしたが、デザイナーと図面を見ながら話していて、「あぐらをかけるくらいのサイズがいいなあ」という話になり、現在の「大」「小」の2種類のサイズ展開になりました。

あとは、和・洋どちらの空間にも合うモダンなデザインと、軽くて手軽に持ち運べる点も気に入っていますね。

「あぐらいす」の製作にあたって気を付けていること

第一に、材料の乾燥です。椅子に限らず、家具材は乾燥が命。湿度の影響で接着が切れてしまうこともありますので、乾燥にはとにかく気を遣っています。しっかり乾燥させてある木材を仕入れるのはもちろんですが、仕入れた後、大きな材料を細かくしていく段階で乾燥の状態が変わってきます。ですから、細かくしてから屋根の上で乾燥させて、できるだけ乾燥の度合いが均一になるようにしています。同じ条件の木材を組み合わせることで、それだけ完成度は高まりますからね。

第二に、R部分の接着です。あぐらいすは、脚の「R」がいちばんきついところで接着していますが、ここの接着が甘いと壊れやすくなってしまうため、接着が最良になるように、独自の道具を使って強く圧着しています。

最後に、オイルフィニッシュの仕上がりです。一般的にオイル塗装は、出来不出来にそれほど差は生まれませんが、それでもお客様が見たときに違和感があってはいけません。少しでも美しい仕上がりになるように、丁寧に塗装しています。

「あぐらいす」の特徴

無垢材でR部分を削り出しているのが、一つの特徴だと思います。シンプルで部材の点数が少ない、あぐらいすならではのこだわりですね。

座面には2次曲線の成形合板を使用

木材に塗るオイルにも優れた特徴があります。当工房で採用しているのは、植物油を主成分としたドイツ製のオイル塗料「リボス」です。このオイルは人体に無害で、幼児が舐めても安心の素材です。

また、座面には天然素材を中心としたイタリア製の布地を採用しています。これは、平織りの生地なのですが、国産の平織り生地にはない独特の手触りと風合いが魅力です。日本では珍しいカラーがあるのも、この生地の特徴ですね。

「あぐらいす」はこんなふうに使ってほしい
日本の住宅事情を考えると、狭い空間を有効に活用するとしたら、大きな家具ではなく、あぐらいすのようなフレキシブルな使い方ができる家具がフィットすると思います。使う場所を選ばないのがいいところですが、例えば、仕事が終わって家に帰ったとき、フローリングにベタっと座るのではなく、ちょっと低い位置に座れるような椅子。そんな暮らしをイメージして作っています。
椅子職人としての今後の抱負

私たち日本人は、長い間、畳や床に座る生活習慣に慣れ親しんできましたが、近年は、住環境の変化や高齢化によって、椅子に座る暮らしが一般的になりました。椅子の作り手としては、座ることでぬくもりを感じられたり、豊かな気持ちになれたりするような椅子を作っていきたいと思っています。少しでも多くの方に喜んでいただける工房になれるよう、今後も誠実に椅子作りに向き合い、努力してまいります。