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- デザイナーインタビュー
あぐらいすのデザイナー紹介
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- ■プロフィール
- 家具デザイナー。1974年、東京都生まれ。椅子を中心とした暮らしにまつわる道具をデザインしている。星亀椅子工房とともに、「あぐらいす」をはじめとする多くの椅子を製作。久喜市総合体育館ロビーの木製ベンチなど、公共施設の家具も手がけている。2008年、あぐらいすでグッドデザイン賞受賞。
- 「あぐらいす」のデザインコンセプト
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あぐらいすは、もともと「お寺で使う椅子を作ってほしい」という話があって、スタートした企画だったんです。お寺で使う椅子というオーダーを受けて、「畳の上で使える椅子」について徹底的に調べ、考えました。そして、思案した末に至ったのが、「畳と最も相性の良い座具って、実は座布団なのかもしれない」という結論でした。座布団というのは非常に使い勝手が良く、日本人の「座」の生活スタイルにしっくりとフィットします。そこで、「木のフレームが付いた座布団を作ろう」というコンセプトを掲げ、設計・デザインしたのがあぐらいすというわけです。
- 「あぐらいす」のいいところ
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第一に、軽くて、どこへでも持ち運びがしやすいことです。場所を選ばずに使えるのは、座椅子として大きな魅力だと思います。また、座面が広くてゆったり座れるのもいいところですね。
デザイン面ではシンプルを突き詰めて、無駄をとことんそぎ落としています。一般的に畳で使う椅子はゴテゴテしたものが多いのですが、あぐらいすはシンプルで、和にも洋にも合わせられるモダンなテイストに仕上げています。家のなかのどこにでも「寛げる場所」を作ることができる――きっと、そんなところが多くの方に評価されているのだと思います。
余談ですが、あぐらいすが完成してからも、「違うバリエーションができないか?」と試行錯誤したことがありました。しかしながら、足してもだめ、引いても難しい・・・。どうしても、オリジナルのあぐらいすを上回るものはできませんでした。逆に言うと、それだけ良い塩梅の設計で、絶妙なバランスがとれている座椅子なんだと思います。
- 「あぐらいす」はこんなふうに使ってほしい
- 西洋化が進んだ現代は、高さのある椅子とテーブルで生活する人が多く、「座」の生活をしている人は少ないと思います。ただ、昔ながらの座の生活にあこがれている人や、日本人らしく低く暮らすことが好きな人は、実は多くいらっしゃいます。「おしゃれな座の生活を楽しみたい」という人には、ぜひあぐらいすを使ってもらいたいですね。低くて落ち着ける空間作りには、ぴったりの椅子だと思います。
- デザイナーとしての今後の抱負
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椅子のデザインは、一生続けていけるものだと思いますし、またずっと続けていかなければならないものだと思っています。極端な話、椅子をデザインするだけなら、誰でもできます(笑)。でも、座り心地の良い椅子となると違います。座り心地の良い椅子を作るには、経験値がものを言う。だからこそ、椅子のデザインは、ずっと続けていくことに価値があるんです。もちろん、座り心地だけを追求すると、それはそれで面白くない椅子になってしまいますし、そのあたりのさじ加減というのは、やはり経験値なんですね。
少し専門的な話になりますが、椅子って「角度」があるんです。脚一つとっても角度があり、他の家具に比べると、デザインや製作の難易度が高く、それだけ手間もかかります。椅子の設計・製作に特化している星亀椅子工房さんは、家具屋さんのなかではすごく高い専門性を持っているんです。一般的な家具メーカーが星亀さんのような椅子を作ろうとしても、難しいと思いますね。
星亀さんは、何より40年以上も椅子を作り続けてきた経験がありますし、社長さん自身もデザインへの関心が高く、「一緒に作り上げていこう」という気持ちが強い方です。こう言ったら失礼かもしれませんが、決して大手ではない工房がグッドデザイン賞をとるなんて、なかなかできることではない。そこは、やはり経験という財産のなせる技だと思います。
椅子って、私たちにとっていちばん身近なプロダクトですから、今後も星亀さんと一緒に良い椅子を作っていきたいですね。